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一條恭輔&滝川ひとみ「成島組のレギュラーになるのが目標です」

映画『八日目の蝉』でアカデミー最優秀監督賞を受賞した成島出監督らが、
所属俳優の指導を行なっている芸能プロダクション「UNCUT」。
同社の第1回オーディションで合格し所属。
5月27日公開の成島監督の最新作『ちょっと今から仕事やめてくる』(東宝:福士蒼汰・工藤亜須加)にも
出演を果たした一條恭輔さんと滝川ひとみさんに、
UNCUTの俳優育成、そして成島監督の現場について聞いた。

――現在『2018春 VIVIT 女優・俳優スター発掘オーディション!』が募集中ですが、同社の第1回オーディションに応募したきっかけは? 一條恭輔「僕はまだ役者を始めてから1年半ぐらいしか経っていないんです。テレビ局でADをやっていたんですが、役者をやるって決めたときに辞めまして。初めは小劇場の舞台に立ったりしていたんですが、本格的に役者をやるなら事務所に所属したいと考えまして。その時、デビューさんに成島監督のインタビューが載っていて、VIVITのオーディションがあることを知りました。成島監督に直接見てもらえるというのと、全員が面接審査を受けられるというのがあったので、これは絶好のチャンスだと思って応募しました」 滝川ひとみ「女優には憧れていたんですが、未成年のときには親に反対されていて。スタートしたのは大学を卒業してからなんです。その頃に100通ぐらい履歴書を送って。そこで唯一、25歳のど素人でも採ってくださる事務所があったので、そこで4年間活動しました。その事務所も家庭の事情で辞めざるを得なくなって、3年ぐらいブランクを作ったんですが、いろんなことに整理がついたときに、やっぱり女優をやりたいって思ったんです」 ――ブランクの間も、ずっと女優をやりたい気持ちは残っていた? 滝川「お友達が舞台やテレビに出ていて、頑張ってるなあっていうのも見ていたし、こんなに楽しい現場は他に無いって思ったんです。だからいろんなことに整理がついたとき、一番最初に頭に浮かんだのは“やっぱり女優に戻りたい”ということなんですね。この業界でお芝居をしたいと思ってオーディションを探しているときに、成島さんのオーディションを知って。そのときはすでに30歳を超えていたので、書類選考で年齢だけで判別されず、個人を見てくれるというのは千載一遇のチャンス、ここに賭けようと思いました」 ――かなり強い思いでオーディションに臨んだんですね。 滝川「応募してから成島監督の作品は全部見ました。『ソロモンの偽証』はもちろん見ていたんですが、観に行くチャンスを逃していた『八日目の蝉』をはじめ、脚本で参加している作品も全部観ました。そのうえで監督が直接見てくださるのなら、ダメでも納得だなと。そういう思いで臨んだので、採っていただけてすごく有難かった。“この子は大丈夫かもしれない”という成島監督と事務所の判断があってのことだと思うので」 ――実際オーディションはどんな内容だったんですか? 一條「1次審査は一枚の台本を渡されて、これを覚えてくださいというものでした」 滝川「A・B・Cの3ランクがあって、“Cは台本を持ってやってもいい。でもオーディションに本気で受かりたい人はAかBで受けてください”という感じで。15分ぐらいで台詞を入れて2人で芝居をする課題だったので、必死で覚えてやりました」 ――審査のときに会った監督の印象を教えてください。 滝川「表情が読み取りにくい方なので、今どういう心境でおっしゃっているのか、怒られているのか、ダメ出しをされているのか、アドバイスをされているのか分からなくて。ただでさえ緊張していたので、最初は圧倒されてました。これは普通の状態でお話しされていたんだなって分かるまでに、観察が必要でした」 一條「当時は、機嫌が悪いのかなって思うぐらいでしたね」 ――そして見事オーディションに合格。去年の5月からレッスンが始まって。 一條「今は3クラスあるんですが、成島監督のオーディションで集まった人だけのクラスがあって」 滝川「1ヵ月半、週1のレッスンで50分の舞台を仕上げるという、いきなり大きな課題が来まして。そこで新人同士の団結力が強くなりました。自主的に集まることが必要な課題だったので、チームワークを見られたんだろうなと思います。芝居経験のある人とない人がいるんですが、ディスカッション出来る場だったので、ズバズバ言い合えるような仲になっていきました」 一條「同期ということもあって、年齢もキャリアも関係なく気を遣わずに言い合える環境ができていたので、自分にとってはプラスでした。経験のある人からいろいろ聞けるような機会を設けていただけたのはありがたかったです」 ――2人の間でも10歳違いますし。 滝川「でも撮影現場に入ったり、同じ舞台の上に立ってしまったら、年齢は関係なく、同期は同期だし」 ――レッスンのなかで言われたことで印象に残っていることは? 滝川「新聞を読みなさいって言われました。今社会で起こっていることは、数年後に映画やドラマの題材になることが多いから、勉強しなさいって。学生時代、こんなこと勉強しても大人になったら使わないよって言うものこそ芸能界では使うんだって」 一條「役を取るためのオーディションで、台本の最初から最後まで上手く出来て100点を取れるならもちろんそれがいいんですが、今の段階でそこまでの実力が無いときに、何を狙うべきか。一番大事なシーンの台詞、要点、ここで落としたい、上げたい、というのを掴んで、そこで100点を取れと。極端に言えばほかは0点でもいい、監督が一番見たい台詞で100点を取っていけば、可能性を考えてもらえるということを教えてもらいました」 ――滝川さんのプロフィールでは、VIVITに入ってからの仕事が、それ以前より多いんですが、ここは現場に行く機会がたくさんあるんですか? 滝川「これまでと比べても、ハンパないほどVIVITにはあります。世の中にはこんなにオーディションの案件があるんだって。だからこそ、通るも落とされるも自分次第ということで。書類に通って、オーディションで選ばれなかった時には“何が足りなかったんだ”っていうことを日々考えますし、落ち込んでいても案件は次から次にあるので、それだけ自分を見つめる機会になりますね」 一條「入ってすぐにいろんな現場を体験させていただいたので、これが当たり前だと思ってたんですが、周りに聞いたら“違う”っていわれて。受かったときに何が良かったのか、落ちたときに何が悪かったのかを考えることができて、次に活かせるし、これがダメだったら違うアプローチをしてみようという考えを持つこともできます」 ――今回映画『ちょっと今から仕事やめてくる』で恩師・成島監督の現場に行くことになったんですが、いかがでした? 滝川「主人公の工藤亜須加さんが勤める会社のオフィスで、社員役は全員VIVITの先輩だったり同期だったりと言う現場でした。まずは何より、黒木華さんや吉田鋼太郎さんの演技を目の前で見られるいう贅沢さですよね。成島監督は“リアリティに無いものはやらないで。でも、上司がこういうふうに声をかけたらそれを拾うよね。大きな声を出されたらビクつくよね。そういうのは普通に動いてよ。台本に書いてないからと言って、やらないわけないでしょ”っておっしゃって。ワークショップでは“台詞は脚本家が意図したものであって、そこにプラスして良いかというのは、役者が判断するものではない”という大前提でレッスンをするんですが、それだけじゃダメなんだなという。役者力が試される現場でもありましたし、役者を活かしてくださる現場でした」 ――吉田さんのアドリブに巻き込まれたことはありました? 滝川「ありました(笑)。すっごい怖かった! 吉田さんが主演の工藤さんを怒鳴りつけた後、先方の接待にオフィスを出て行くというシーンだったんですが、リハーサルのとき、突然アドリブで『お前も来い!』って言われて。絶対に逆らえない上司の設定だったので、“いいの? 私”って思いつつ『ハイッ!!』ってついて行くという芝居がありまして。ただ、接待にキャバクラに行く設定だったので“女の子を連れて行くのは脚本上おかしいですよね”って無しになったんですけど、その時は瞬時に反応することができました。吉田さんへの尊敬の念もあった上で、吉田さん演じる部長には絶対的に逆らえない状態が3年続いていてという設定を作っていたので。巻き込まれるのは心臓に悪かった反面、ちょっとイジッテもらえたという嬉しい面もありました」 一條「大きな現場で活躍されている俳優との現場が初めてだったので、最初は“部長さんだ”、じゃなくて“吉田さんだぁ”って感じでしたし、同僚じゃなくて“黒木さんだ、工藤さんだ”っていう感覚で。最初はミーハーになっちゃってたんですが、現場の空気や役者陣の佇まいを見るだけで、違うって思って。自分もここの社員なんだっていうのを自覚できました。吉田さんは台本の台詞を、監督の指示によって全然違うニュアンスの言い方をして、僕からしたら感動に近いものがありました。黒木さんは、周りの人やモノを使うことも多くて、急に『なっ?』って肩を叩かれたり。そこももちろん『ハッ、ハイ!』ってならなきゃいけないところなので、メインキャストじゃないところでも演技の反射神経を試されました」 ――現場ではレッスン以上に得られるものが大きかったようですね。 滝川「ワークショップでお世話になった監督の言葉になってしまうんですけど、映画やドラマの場面の空気を作るのはいわゆるレギュラーエキストラしかできなくて、その人たちの実力によって現場って違うから。エキストラだからって気を抜くんじゃなくて、エキストラだからこそ気合入れていくんだよって。成島監督がいらっしゃるからこそ、事務所のが選抜してくださって、成島作品の現場に行ける機会があるのは有難いことだなって」 ――滝川さんは 撮影前にリハーサルの相手役も務められたとか? 滝川「成島監督は台本上にあるものだけでなく、その前後にあるシーンを作られるんです。今回、工藤さんの役柄の構築をされるときに呼んでいただきました。“このシーンを演じるためには、外回りの営業で断られるシーンが必要だよね?じゃあそこをやろう”とか、“ミスを犯して迷惑をかけた先方の会社の部長と会って怒られて帰ってこようか? じゃあ滝川さん部長役をやって”っていう感じで。映画を撮る前に、こんなにワークショップをやってくださる監督はいないだろうなと思うと、本当に贅沢な経験をさせていただきました」 ――映画を作る一部に深く関わることができたんですね。 滝川「でも、“成島監督のオーディションで来たんだから、お前なら出来るよな?”っていうプレッシャーも感じたので、テンパッて、いい意味でも悪い意味でも泣きそうでした(笑)。成島監督はこのワークショップをやりながら“この台詞言いづらい?”とか“ちょっと今の顔違ったよね。もうちょっと追い込まれた顔をするには何が必要?”って必要なものを俳優と一緒に探していくので、そのお手伝いをするなかで、役柄が腑に落ちるためにはどうやって探っていけばいいのかを垣間見ることができて、本当に面白かったです」 一條「自分にもそんな経験が出来る機会が回ってくるかも知れませんが、滝川さんが泣きそうになっているのを知っているので、怖くもありますね(笑)」 ――VIVITに来て、自分の中で一番変わったことは? 滝川「これだけのオーディション案件があるということと、事務所自体もこれから新しい人材を迎えて大きくなっていこうという段階なので、言われることは厳しいですね。毎回のワークショップがビデオ撮影されて、評価されて、何かあればマネージャーと話してという環境なので、常にオンの状態でいるという意識が強くなりました。いつでも“滝川ひとみです”っていう、表に出る人であるために必要なスイッチを改めて発見しました」 一條「見られている意識と言うのを凄く感じます。マネージャー陣とのコミュニケーションもそうですし、露出が増えた分、“観たよ”っていう反響もあって、自分を見られてるんだなというのを感じて、自分への意識も高まりましたね。普段の生活を含めて改善しようと思うようになりました」 ――役者としての目標と夢を教えてください。 滝川「近い目標としてはテレビドラマにレギュラーで入りたい。そしてもう少し頑張った目標は、成島作品のレギュラーになることですね。成島組の一人として“滝川、いいじゃん”って言われたい。私の年齢ではオーディションはほとんど母親役なんですが、実際私は結婚していないですし、子供もいないですけど、“子供いるかと思いました”って言われるぐらいになりたいですね。今は待機児童が社会問題になっていたり、そういったテーマの作品が増えるサイクルにあると思うので、そういう案件も獲っていきたいです。無駄なことは何一つないですし、遊びさえも勉強になったり、演技に使えるので、こんなに人生の全てが使える職業なんて無いと思います」 一條「僕も成島監督の作品には出たいですね。成島監督のオーディションで事務所に入ったという経緯もあるので、恩義を返すのがこの仕事をやっていくうえでの目標になるのかなと。成島さんの書いた脚本が映画化されるとき“アイツがいた! 一條頼む!”っていうぐらいになれたら」 滝川「ご指名がいいよね!(笑)」